ミャンマー露天商

ミャンマーの路上でよく目にするスナックの露店販売。彼らはどんな生活ぶりをしているのだろう。チョーザーウィンさん(44歳)は、普段は10エーカーの土地を所有し農業を営んでいる。しかし数年前から農業の閑散期にサモサ(すりつぶしたジャガイモなどの野菜を薄皮で包んで揚げた軽食)を売ってミッチーナやタウングー、ピンマナなど、ミャンマー各地を歩く生活を始めた。スナック売りに適した場所を探し求め、一年前に行きついたのは地方大学のキャンパス内だった。

ミャンマー地方大学の食堂事情

ミャンマーの首都、ネーピードーの郊外にぽつんと佇むイエジン林業環境科学大学のキャンパス内。広大な敷地を有するこの大学は全寮制で、1年生から5年生の学生、そして教員までもが全員キャンパス内で生活をしている。日本の大学ならどこにでもある生協ショップのような店はどこにもない。その代わり、路上で移動式の屋台があちらこちらに点在し、キャンパス内にある市場で食材を調達することもできる。

大学内の屋台
大学内の路上には様々な屋台が並んでいる
大学内の市場
大学キャンパス内の市場の様子

サモサ屋さんは大学の人気者!でも、本業は…?

その中に、1人小さな鍋の前に座り、揚げ物をしているおじさんがいる。サモサに加え、コーピャンレー(コーンを春巻きの皮で包んで揚げたもの)、パヤーチョ(すりつぶしたマメを揚げたもの)を売るチョーザーウィンさん。朝の10時から学校が終わる夕方の5時までサモサを揚げる。1時間の間に8人の学生がおいしそうなにおいに引き寄せられてきた。「おーい、今日は買ってかないのか」「後で来るさ~」道行く学生と親しげに会話を交わすチョーザーウィンさんの様子は客が定着していることを伺わせる。1袋500チャット(約35円)。一日の売り上げはだいたい2万チャット(約1,400円)だ。できるだけ儲けが出るように、燃料は自ら木を切って調達するのだという。

ミャンマーの揚げ物
袋の中に3種類の揚げ物を入れてくれる。タレがついて約35円

そんなチョーザーウィンさんは、普段はミャンマー中央部に位置するタウングーの町からほど近い村で農家を営んでいる。田植えの後、農業はしばらく閑散期となるため、「この時期は家にいる両親で人手が足りるから、少しでも生活の足しになることがしたい」と3年前からサモサを売り始めた。両親が高齢となり、結婚をしていないチョーザーウィンさんにとって、人手が必要な農業を続けるのは大変だ。そのため、他の道を模索し始めたのだという。初期投資が少なくて済み、好きな時期に仕事ができるというのが露店販売のメリットだ。

競争相手の少ない場所を探して辿り着いた場所

最初は人が多い町でサモサ売りを始めたが、町には同じようなスナックを売る店がたくさん立ち並ぶ。それならば競争相手がいない場所を探そうと思い立ち、1年前に行きついたのがこの地方大学だった。広大な面積に多くの学生が集まっているが、その中でサモサを売っているのはチョーザーウィンさんただ一人だ。揚げ物のにおいにつられて休憩時間の学生たちがふらっと立ち寄ってくれるこの場所は商売に最適だ。さらに学校が休みの土曜日、日曜日も、大学からバイクで15分のショッピングモールに行き、スナックを売っている。多くの大学生がショッピングモールに出向くため、顔見知りが買ってくれるという。

学生時代の懐かしの味、になるように

学生たちがスナックを買いに来る
休み時間になり、通りすがりの学生が買いに来た

広大な敷地のキャンパスの中を日によって少しずつ移動するのがチョーザーウィンさん流のやり方。大学の学生にできるだけ知ってもらうためだ。「俺は農業をしない期間は毎日休まずここで商売をするんだ。だからこのキャンパスにはたっくさん知り合いがいるんだよ!」と語る顔は誇らしげだ。

「今日はおじさんのスナック、買いに行こう!」そう思い立った学生がきょろきょろしたらそこにいてくれる、そんな「いつもの」味は、どこの国の学生にとっても安心感を与えてくれる。

話し手:チョーザーウィンさん(44歳)
ビジネス:農業・揚げ物の露店販売
世帯人数:3人 (父・母)
月収:
約20万チャット(約1万4,000円)※一年のうち2~3か月間
+農業からの年間収入
米 240万チャット/年(約16万8,000円)
豆 30万チャット/年(約2万1,000円)
+牛5頭の飼育による臨時収入あり

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