夫パンさんと妻サンさん
バイク修理店を営む夫パンさん(46)と喫茶店を切り盛りする妻サンさん(45)

今回インタビューしたのは、ヤンゴン管区コムー郡区(ヤンゴン市街地からフェリーと車で約1時間半)のはずれにある小さな村で、バイク修理店と喫茶店を営むパン・ウィンさん(46)とサン・サン・ミャインさん(45)夫妻。隣り合わせでそれぞれの店を営む二人から、事業の話と彼らが叶えようとしている夢について聞いた。

繁盛店を切り盛りする妻サンさんと、アイデア豊かな夫パンさん

夫妻は5年前にこの村に引っ越してきて、自宅の敷地内で喫茶店を始めた。週7日、朝6時から夜9時まで15時間も営業しているお店は、妻のサンさんがほぼ一人で店を切り盛りしている。一番人気はサンさんが作るキンマ(噛みタバコの一種)だ。

キンマを作るサンさん
キンマを作るサンさん

「夫はキンマづくりがうまくないの」と笑うサンさん。毎日30~40人のお客さんが来るため、店の仕事と家事だけで一日が終わるくらい忙しい。また店の前には僧院があり、そこでお祭りがあると日雇いで人を雇わなければいけないほど店は繁盛するという。

一方、夫のパンさんは半年前から喫茶店の隣でバイク修理店を始めた。これまで村にはバイクを修理できる場所がなく、村の人たちは1時間以上かけて町の中心部まで行かなければならなかった。そこに目を付けたパンさんは、ミャンマー政府が各村に参加者を募っていた20日間の技術研修を受けて開業した。今は1日4~5人が来店するという。

喫茶店とバイク修理店
喫茶店(左)とバイク修理店(右)が 隣り合っている

パンさんはほかにもガスパイプを点検する仕事を役場から請け負ったり、自宅の隣でトマトを栽培・販売したりするなど、幅広くビジネスを展開するなかなかのアイデアマンだ。

また、喫茶店で取り扱う商品は、元々はパンさんが片道1時間かけてバイクで町の市場に行き仕入れていた。しかし、あるとき立ち寄った町の喫茶店が日系企業リンクルージョンの商品配送を利用しており、そこで初めて同社の配送サービス(※)について知った。商品の価格を聞き、その安さに驚いて連絡をとったという。
配送サービスを利用することで「商品の仕入れのために必要だった時間やバイクの燃料費の節約にもなった」と、そつがない。

(※)リンクルージョンは、ミャンマーでマイクロファイナンス機関向けに金融システムを開発・提供するほか、農村地域の零細商店や飲食店を対象に、食料品や日用品を配送する流通事業を展開している。自社で運営する倉庫で商品を保管し、パンさんら零細事業者が携帯電話で注文した商品を店頭まで毎週配送している。

リンクルージョン配送サービス
注文翌日には届く、リンクルージョンの配送サービス

 

夫妻が、店の必需品でない「本」を購入する理由

パンさんはリンクルージョンのサービスを通じ、店に必要な商品だけでなく、本や雑誌も購入している。まだ数は少ないが、子ども用と大人用の読み物の両方を準備し、喫茶店のお客さんが気軽に手に取ることができるようにしている。

本
パンさんがこれまでに購入した本と雑誌

他の店と差別化するための工夫だが、実は、村に図書館を作ることがパンさんの夢でもある。

「子どものころから本を読むのが好きだった。でもなかなか本を買えず、僧院など無料で本を貸出してくれるところによく通っていた。この村の子どもたちのために、たくさんの本を自由に読める図書館を作りたい」

本とパンさん
本を手にするパンさん

現時点では図書館を設置する場所も資金も決まっていないが、村には協力者もおり、話し合いをすすめているという。より多くの本を入手するため、本の貸出を有料にし、それを元手にほかの本を購入するアイデアもあたためている。
妻のサンさんも「今はまだ何も決まってないけれど、将来図書館ができる見通しがたったらサポートしたいわ」と話す。

サンさん自身も、目指していることがある。「この喫茶店をもっと繁盛させて、その収益を元手に食品の小売りも始めたいの。私は商売が好きだから」。いつかまたこの村に、図書館と大きくなった喫茶店を訪ねるのが楽しみだ。


話し手 :パン・ウィンさん (
46歳)、サン・サン・ミャインさん (45)
ビジネス:喫茶店、バイク修理店、その他
世帯人数:2人 (本人、夫)
世帯月収:52万チャット (約36,000円)
(内訳)
 喫茶店                   21万チャット (15,000)
 バイクの修理店    :17万チャット (12,000)
 ガスパイプの点検作業:14万チャット (約10,000円)

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