日系企業の倉庫マネジャーとして働くトゥトゥ・ヌエさん(26)
日系企業の倉庫マネジャーとして働くトゥトゥ・ヌエさん(26)

今回は地方で企業勤めをする女性にインタビューした。話を聞かせてくれたのは、日系企業リンクルージョンで働くトゥトゥ・ヌエさん(26)だ。ヤンゴン市街地から船と車で約2時間のコム―郡区で、農村部の零細商店に食料品などを配送する流通事業の倉庫マネジャーを務めている。

滅多にない企業勤務の機会。噂を聞き、自ら扉を叩いた

彼女が就職したのは約1年前。同社が地元に倉庫を立ち上げるという噂を聞き、履歴書を手に開業直前の同社の扉を叩いた結果、採用の機会を掴んだ。

トゥトゥさん(中央)が勤め先の倉庫で朝礼をする様子
トゥトゥさん(中央)が勤め先の倉庫で朝礼をする様子

コム―郡区は農村地域で、企業はほとんど存在しない。働き口といえば市場での肉体労働が中心で、女性は敬遠されがち。また、女性は家事手伝いや近所で働くことを求められることが多く、男性に比べ就業機会は限られる。この地域の若い女性たちは家事を手伝うか、農業など実家の仕事を手伝うか、仕立の内職をしている場合が多いという。

トゥトゥさんも高校卒業後にヤンゴンで1年間事務の仕事をした後、実家に戻って仕立をしていた。実家に戻った理由の一つには、都会で暮らす彼女を心配する家族の声もあった。

「ただ、仕立の仕事は徹夜することもあったのに収入はとても少なかった。それに実家での暮らしは退屈だったの」

応募理由を恥ずかしそうに話したトゥトゥさん。当時と比べて収入は3倍になった。仕事が楽しいので、できるだけ長く続けたいと語る。 

「仕事をしていると時間が飛ぶように過ぎていく。毎日がとても充実しています」

実家は農家「自分の仕事を持ってくれてうれしい」

トゥトゥさんの実家にもお邪魔した。実家は舗装されていない悪路をバイクで片道45分かかる場所にあるため、トゥトゥさんは倉庫に住み込みで働いている。

トゥトゥさんと両親
トゥトゥさん(右端)と両親。この日は姉(左端)も帰省していた

実家は父母と弟の3人暮らしで、トゥトゥさんは週末だけ戻る。父ミエン・アウンさん(55)は農業に従事し、母オウン・チーさん(63)は専業主婦。弟(25)は農産物を運搬するトラクター運転手だ。また、姉(32)が別の村で教師として働いている。

子どもたちが外で働くことについて、父アウンさんは「3人とも自分の仕事を持っていてくれて、うれしい。彼らが小さい頃から農業の手伝いはさせず、勉強に専念させてきたんです」と話す。

トゥトゥさんが会社に住み込みで働くことも「以前ヤンゴンで働いていた時は心配だった。今は同じ郡区だし、週末には帰ってきて自分たちを助けてくれる」ので応援しているという。

仕事を通じ、より積極的に

トゥトゥさんの主な仕事は、入出金管理、受注、スタッフの管理育成。繁忙時は出荷作業の手伝いまでこなすこともある。

 「最初は顧客とのコミュニケーションが難しい時もありました。でも、研修を受けられたので、今では人と話すことが怖くなくなりました」

現在の仕事を始めてから、知識が増えたのはもちろん、積極的になったと感じているという。

 同事業で働く現地スタッフは約50人で、男女比は半々。現地責任者の沼田桜子さん(33)によると、求人を出さなくても履歴書を手に倉庫を訪ねてくる若者は多く、特に女性が目立つという。

「そのためか、女性スタッフはみな意欲があり、まじめで優秀です」

中には働きながら通信制大学で勉強する10代のスタッフもいるという。

トゥトゥさんと同僚の女性スタッフたち
トゥトゥさん(左)と同僚の女性スタッフたち

沼田さんはまた「女性スタッフは、これが初めての就職という人も多いです。今までは親にただ従っていたが、ここでの経験を通じて自信をつけ、家族に自分の意見を言えるようになったという話も聞きます。仕事を通じて積極的になったり自分で選択肢を増やせるようになったりするなど、エンパワーメントにつながっている例を見ると、うれしいですね」と話す。

自ら就業機会をつかみ、仕事を通じてさらに積極的になったトゥトゥさんや同僚の女性スタッフたち。より多くの女性が積極的に社会に関わっていく未来に期待したい。

トゥトゥ・ヌエさん
トゥトゥ・ヌエさん

話し手 :トゥトゥ・ヌエさん(26歳)
ビジネス:日系企業の物流倉庫マネジャー
月収  :40万チャット (約28,000円)

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