ミャンマーの家庭やレストランでは、調理のために火を起こすことが多い。
今回訪問したスラムにある家庭も、例外ではなかった。
そしてこの家庭では、火起こしのために木炭と2種類の木を使うという。
今回はスラムを訪問してわかった、火起こし事情に迫りたい。
スラムのレストランでインタビュー
今回訪問した家庭はミャンマーの最大都市ヤンゴンの郊外に住む、お父さん(35歳)とお母さん(38歳)と娘(4歳)の3人家族。
話し手であるお母さんは、家の軒先でレストランを営んでいる。
メニューは5種類の麺料理とチャーハンの計6種類。
1番のオススメは、ミャンマーの国民食「モヒンガー(ナマズ出汁スープの麺料理)」だそうだ。
ちなみにミャンマーでは、家の軒先でお店を開くことが多い。
レストランや喫茶店、雑貨屋など、お店の種類は多岐にわたる。
調理場に潜入
毎日、お母さんが使う調理場はどうなっているのだろうか。
「調理場について知りたい、教えて!」
「もちろん。まず、ここが切ったり、盛り付けたりするカウンターよ。」
「そして、これが私の仕事には欠かせない薪コンロ!」
青い薪コンロの上に鍋を置き、麺を湯がく。
お母さんはこの調理場で、開店1時間半前の朝4時から準備を始めるそうだ。
2種類の木で、火起こしを簡単に!
そのコンロの側に、2種類の木材が置かれていた。
それらには、火起こしを簡単にする特徴がある。
まず、1種類目はコンロの中に組まれた木。
「これは何の木?」
「普通の薪だけど、引火しやすいように薄く切り分けられているの。この薄さがポイントよ。」
次に、2種類目。
「こっちの木は何?少し色が違うけど…」
「火を点けるための木よ。油分を含んでいるから、ライターやマッチですぐ燃えるの。」
この木は松の木で、松脂(まつやに)という油分を含んでいる。
そのため、燃えやすいという特徴があり、火起こしによく活用される。
「この2種類の木材を上手に使い分けると、簡単に火を起こすことができるのよ。」とお母さんは言う。
着火の瞬間:木の特徴を活かす
お母さんに火起こしを実演してもらった。
「まずコンロの中に細かい木を置いて、松脂の木とライターを持つのよ。」
「ライターで簡単に燃えるのかな。」
「こうやって松の木を燃やして、コンロの中の木に火をつけていくの。」
「本当に勢いよく燃えてる!!」
「中の木に火が移ったら、木炭を入れて火を大きくしていくだけよ。」
ちなみに、2種類の木と木炭にかかる1ヶ月の費用は28,700チャット(約2,870円)ほど。
それらは家の近くの小さい市場で買うそうだ。
ミャンマーでは、大半の人がガスコンロや電磁調理器を持ってない。
国勢調査(2014年)によると、調理で薪を使う世帯は69.2%、木炭は11.8%となっている。
80%以上の人が、日常的に火を起こしている。
近年、都市部のショッピングセンターなどでは、ガスコンロや電磁調理器が売られ、中間層以上を中心に普及しつつある。
しかし、農村部は当然ながら、都市部の屋台やローカルレストランでも、薪や木炭で調理する光景をよく目にする。
まとめ
2種類の木を使い分け、簡単に火を起こしていたお母さん。
とはいえ、毎日のこの作業は面倒ではないかと疑った。
そこで、「調理場で改善したい点やほしいものは?」とお母さんに聞いてみた。
「ガスコンロや電磁調理器が欲しい。」という答えを期待したが、予想に反して「調理場を広くしたい。」とのこと。
火起こし自体には、あまり不満を抱えていないようだ。
ミャンマーにおいて、薪や木炭などによる火起こしにはまだまだ根強い需要があり、2種類の木は家族の生活とお母さんのビジネスを支えている。
ビジネス:レストラン経営(夫:トラック運転手)
世帯人数:3人 [夫・長女] 世帯収入:400,000~600,000チャット(約40,000~60,000円)