ミャンマーにおける水道事情
都市部の水道は?
ミャンマーには、海があれば川もあり、更に雨季(5月下旬~10月上旬)には大量の雨が降るため、水資源は豊富にある。
しかし、ミャンマーの全世帯のうち、日本のように住居まで配管がひかれている世帯はたったの4パーセント(1)。
ヤンゴン市内でも、多くの住宅やアパートではポンプを使って井戸から水を汲み上げ、室内の貯水タンクに水を溜めて使用している。
水の汲み上げにはモーターを利用しているため、停電中にタンクの中の水が無くなると、シャワーもトイレも使えなくなってしまう。
外へ汲みに行くよりははるかに便利だが、日本に比べるとやはり不便である。
水の供給と安全
ヤンゴン中心部には英国の統治時代に設置された上水道設備があるものの、老朽化が著しい。
しかし、その整備には莫大な資金が必要となるため、なかなか進展していない。
郊外にはそもそも上下水道が存在していないことも多く、水浴びや家事に使用する水は、雨水や川の水をろ過して使用したり、毎日購入したりしなければいけない。
トイレは簡易水洗式であるため、用を足したものがただ下に流れるだけ。衛生状態の悪さがうかがえる。
(参考:スラム街のお風呂事情・トイレ事情)
今回取材した家庭のように安価で水道水を利用できる家庭は、スラム地域ではかなり珍しいと言えるだろう。
(弊社の調査によると、ミャンマーのスラムにおいて生活用水として水道水を利用している世帯は25%、井戸水を利用しているのは67%にのぼる。)
以下の表は、世界銀行が発表した「安全な水を使用する人口の割合」である。
ここでの”安全な水”とは、供給過程において汚染を免れている水を指す。
上の表では、カンボジアやラオスといった、ミャンマーと同じASEANの後発開発途上国と比較してみた。
数字だけ見ると、ミャンマーにおける安全な水へのアクセス状況は悪くはなさそうだ。
しかし世界保健機関(WHO)は、東南アジア数か国での調査に基づいて、貯水タンクやパイプの清潔さ、各家庭での水の保管方法などを考慮すると、ここでの”安全”は必ずしも信頼に足るものではないと警鐘を鳴らしている(2)。
蛇口を捻ればたちまち綺麗な水がほとばしり、しかもその水を飲むこともできる。
ボタン1つであっという間にトイレの水が流れる。
このような日本の常識が世界では通用しないということを、つくづく痛感させられた。
まとめ『生活に不可欠な「水」の存在』
家の前にしゃがみこんで食器を洗うお母さん。
頭から勢いよく水をかけ、気持ちよさそうに水浴びをする若者。
走り回って汗をかき、美味しそうに水を飲む子どもたち。
「水」に注目しながらスラム街を歩くと、いかに水が人々の生活にとって必要不可欠であるかを改めて実感した。
ビジネス:市場での調理器具販売
(現在は子育てに専念するため休業中)
世帯人数:5人 [夫(建設会社勤務)・長男(8歳)・次男(4歳)・長女(8か月)]
【参考】
(1) 「ミャンマー BOP層実態調査レポート (2016年1月)」日本貿易振興機構 (JETRO)
(2) 「Why “improved” water sources are not always safe」;World Health Organization (英語資料)