ミャンマーの働く女性

ミャンマーには、多くの働く女性がいる。

活気溢れる市場に一歩足を踏み入れれば、通りすがりの人々に威勢よく呼びかける女店主の声が飛び交う。
通勤時間帯のバス停は、オフィスに向かう女性たちで溢れている。

学校を卒業したての女の子も、子どもを抱くお母さんも、貫禄があるおばちゃんも、街のいたるところで日々せっせと働いているのだ。

そこで、今回は「女性の社会進出」をテーマに、道行く人々に街頭インタビューを実施した。

女性の社会進出は本当に進んでいるのか

ミャンマーにおける女性の労働参加率

世界経済フォーラムの調査によると、他のASEAN諸国と比べてもミャンマーの女性労働参加率は高く、男性の労働参加率との差は少ない。

ASEAN諸国における女性の労働参加率
“The Global Gender Gap Report 2017” WORLD ECONOMIC FORUMより筆者作成

統計上の数字を見る限りでは、ミャンマー人女性の社会進出は進んでいるように思える。
しかし家の外で働く女性が多い一方で、ミャンマーの家庭を見てみると、家事労働のほとんどを女性が担っている。

果たして、人々の意識の上でも、ミャンマー社会における女性の社会進出は本当に進んでいるのだろうか
街中で取材を行い、人々が現状を肌でどのように感じているのかを探ってみよう。

街中で取材を実施!

ミャンマーの市場

場所は、ミャンマー最大都市・ヤンゴンの中心部から少し離れた場所にあるナダウィン市場。
食材から衣服、日用雑貨など日常生活で必要なものが一通り手に入る場所で、早朝と夕方を中心に地元の人々で賑わっている。

取材をしたのは、この市場で働く10~60代の男女12人。
市場で服屋や金のアクセサリーショップ、米屋や薬屋等を営む人々だ。
内訳は、10~20代、30~40代、50代以上がそれぞれ4名ずつで、全ての年代について男女比は1:1である。

1人当たりのインタビュー所要時間は5分程度で、それぞれ6つの質問を聞いた。
ちなみに今回のインタビューでは、賃金が発生する労働を「仕事」、家庭内で行われ賃金が発生しない労働を「家事」と呼んでいる。

取材結果:ミャンマー人女性の社会進出のリアル

質問① 女性は結婚後も仕事をすべきか。

女子は結婚後も仕事をすべきか

1つ目の質問では、7割弱の人々が「仕事をすべき」と回答した。

その理由として、30代の男性は「女性も男性と同じく、社会で自らのポテンシャルを発揮する機会があるべきだから」と述べたが、ほとんどの人々は「夫の収入だけでは、家計を支えるのに不十分だから」といった経済的な理由を挙げた。

一方「仕事をすべきでない」と回答したのは男女それぞれ2人ずつ。
回答の理由として、10代の女性は「あまり働くのが好きでないから」、10代の男性は「女性は家事をすることで家庭を支え、男性は収入を得ることで家庭を支えるべきだから」と答えた。

質問② 女性は出産後も仕事をすべきか。

女性は出産後も仕事をすべきか

結果は質問①と大きく変わらず、7割弱の人々が「仕事をすべき」と答えた
その大半は「子どもが幼い頃は一時的に仕事を辞め、ある程度大きくなったら再開するべき」と考えており、理由として「子どもが生まれたことで出費が増えた家計を支えるため」と述べた。

結婚後の女性は家事に専念すべきと回答しながらも、「子どもが生まれたら養育費が必要だから、できるだけ働いて欲しい」と答える男性もおり、多くの家庭が子育てにかかる費用を稼ぐのに苦労していることがうかがえた。

質問③ 結婚は何歳ですべきか。

何歳で結婚すべきか。

この質問では、女性には女性の、男性には男性の理想的な結婚年齢を聞いた。
一般に、大学進学率が上昇し社会進出が進むと、かつての結婚適齢期とされていた時期がキャリアアップの時期と重なり、結婚が遅くなる傾向にあるためだ。
(ちなみにミャンマーでは、高校卒業が16歳、大学卒業が20歳程度と日本より2年早い。)

まず、男女で大きな差は無いものの、男性の方が結婚を希望する時期が少し遅いことが分かった。
この理由として、多くの男性回答者は、「精神的に成熟した年齢だから」「家族を養うのに十分な財力を身につけてから結婚したいから」と答えていた。

女性の結婚年齢について言えば、国勢調査(2014)では、ミャンマーにおける女性の平均結婚年齢は23.6歳となっていた。
1973年の21.3歳よりも2歳上がっており、しかも現在の人々の理想の結婚年齢が25.8歳になっていることから、年々女性の晩婚化が進んでいると考えられる

質問④ 性別は就職に影響すると思う。

性別は就職に影響すると思う

75%の人が「影響しない」と答え、その理由として「性別よりも学歴や資格の方が重要だから」と述べた。

またいずれの回答でも「一部の仕事は性別によって適性がある」という意見があり、具体的には、建設現場などでの肉体労働は男性、教員、縫製など一部の工場、そして接客業全般は女性の方が向いているという声があがった。

女性の方が向いていると考えられている職種は一般に多いようで、「女性の方がむしろ雇用機会に恵まれている」という声も複数寄せられた。

質問⑤ 家事は女性だけがすべきか。

家事は女性だけがすべきか

この質問では、7割以上の人が「女性だけですべきでない」と答えた

理由としては、「夫婦は協力すべきであるから」「男女は平等なので、双方が負担すべきだから」「こなすべき家事が多すぎるため、女性一人でやるには負担が大きすぎるから」というものがあった。

一方「女性が家事を担うべきだ」と答えた人たちは、「妻の体調が悪い時は手伝うが、基本的には全てやってほしい」「夫は外で働き、妻は家を守るべきだ」という理由をあげた。

質問⑥ 女性が仕事と家事を両立するのは難しい社会であるか。

女性が仕事と家事を両立するのは難しい社会であるか。

ここで、少し意外な結果が出た。

「結婚・出産後も仕事をすべきだ」「家事の負担は夫婦で分け合うべきだ」という意見が多かったにも関わらず、7割弱の人々が仕事と家事の両立を「難しい」と考えているのだ。
一体どういうことだろうか。

「女性が仕事と家事を両立するのは難しい」と答えた人々に話を聞いてみると、どうやら「仕事と家事の2つを完璧にこなすのは負担が大きすぎる」と考えているようだ。
「女性がこなすべき家事の負担が大きすぎる」「昔は男性が外で働き、女性は家の中で働いていたが、最近は女性が両方やらなければいけないから大変だ」と彼らは言う。

しかし、男性も女性も外で働きながら家事をするのなら、負担は減るはずである。

更に話を聞いてみると、「夫婦で協力して家事を行うべき」とは言いつつも、男性(夫)は手伝いをする立場であり、中心となって家事を行うのはあくまでも女性であると考えていることが分かった。

家事の中でも、男女それぞれが行うべきものが大まかに分かれており、ミャンマー社会に性別役割分担意識があることがうかがえた。

まとめ:女性の社会進出×男性の家庭進出

ミャンマーの主婦
家事にいそしむ女性

インタビューの結果からは、男女ともに女性の社会進出に対してはおおむね肯定的に捉えていることが分かった。
7割弱の人々が結婚・出産後も女性が働くべきだと考えており、またほとんどの人は性別が就職に及ぼす影響はほぼないと考えている。
この背景には家計の厳しさなど経済的な理由もあるが、女性が家の外で働くことに肯定的な人が多いことは、社会での活躍に意欲的な女性にとって朗報である。

一方で、男性の家庭進出はあまり進んでいないようだ。

7割以上の人々が、男女で家事の分担をすべきだと答えているのにも関わらず、実際はその多くが「女性が家事と仕事を両立するのは難しい」と考えている。
女性は男性と同等に働くべき、と考えている一方で、中心となって家事を担うのは女性であり、男性が協力”するのはあくまでも補助にすぎないのだ。

男女がより平等に活躍する社会を形成するには、家の外で働くことを推し進めるだけでなく、人々がいかに家庭内での仕事を分担できるようにするのかを考えるべきではないだろうか。

※「結婚しないミャンマー人女性の割合がアセアン内で第2位に」MYANMAR JAPON ONLINE

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