「新しくビジネスを始める予定なの。」と話し始めたのは、今回訪問した家庭の長女カインさん29歳。

家に足を踏み入れると、そのビジネスで使うというぬいぐるみが目に入った。

ぬいぐるみたちが苦しそう…

起業するのは、「お金持ちになりたい」といった単純な理由ではない。
それは、未来を見据えた計画に基づいていた。

スラムの大家族を訪問

今回訪問したのは、ミャンマーの最大都市ヤンゴンの郊外にあるシュエピターという地域。
ヤンゴン中心部から、車で約1時間の距離にある。

まずは家族構成からみていこう。

この家庭は、1つの家に2世帯11人が住む大家族だ。

お父さんとお母さんは、マイクロファイナンスからの資金を利用して、花と果物を売るお店を営んでいる。
サトウキビを切り分けたり、花の茎を整えたり、2人とも忙しそうに働いていた。

ミャンマー-お店
お店の様子(手前からグアバ、サトウキビ、奥に赤と白の花が置かれている。)

カインさんの夫は、仏壇用の飾り物を作る木工職人だ。
注文と同時に送られてくる木をくり抜き、飾り物に仕上げ、家具屋に売るというビジネスをしている。

ちなみに、国民の約90%が仏教徒のミャンマー。
ほとんどの家庭には仏壇があり、このような飾り物をよく目にする。

ミャンマー,仏壇
夫が作る飾り物(左)とミャンマーの仏壇(右)

今までカインさんは、お父さんとお母さんの商売を手伝ってきた。
しかし最近は、新ビジネスの準備に追われているという。

新ビジネス:成功の鍵はぬいぐるみ!

カインさんの新ビジネスは、お祭りなどで出店する風船ダーツゲームの露店だ。

ダーツの矢を投げ、割った風船の数に応じて景品がもらえるというゲームである。
1プレイ500チャット(約50円)で、4本の矢を投げる。もし風船を4つ割ることができたら景品がもらえ、3つ以下だったらポケットティッシュ。

ミャンマーのお祭りでは、この露店が隣り合わせで並ぶこともあり、とても人気なゲームの1つだ。

ミャンマー-お祭り
ミャンマーのお祭り

私が最初に目にした、袋に詰め込まれたぬいぐるみは、このゲームの景品になる。

彼女曰く、ぬいぐるみはミャンマーで人気が高いとのこと。
以前、夫が露天商としてぬいぐるみを売っていたことがあり、その経験から売れ筋と人気を知ったそうだ。

しかし、単なる販売ではつまらないと思い、ぬいぐるみを目玉景品にしたゲーム屋さんを思い付いた。

20代で起業を決意した理由:将来を見据えた計画

冒頭でも述べた通り、この家庭は11人の大家族。
将来を見据えると、カインさん自身が稼がないといけない状況だという。

「両親は50代後半で、そろそろ無理できない年齢に近づいてきているの。体に何かあった時のために備えないといけないでしょ。」

両親の老後に向けて、少しずつ貯蓄をしていきたいようだ。

ミャンマーの平均寿命は男性65歳 、女性68歳⑴。
日本では50代後半はまだ働ける歳だが、ミャンマーではそうではない。

また、兄弟のことも考えている。
「兄弟6人のうち、4人が学生なのよ。中学生の子はチューシン(塾)に行っていて、後の3人も行くことになるだろうから、教育にお金がもっと必要になるわ。」

このように、家族の将来を見据え、計画的に収入を増やそうとしている。

おわりに

ビジネスを新しく始める、長女カインさん。
家族の将来を考え、いつお金が必要になるのかを長期的に考えていた。

貧困層と聞くと、日々を生きるのに精一杯というイメージを抱くかもしれない。
しかし、カインさんのように未来を見据え、1人であるいは家族で起業する人が多い。

ミャンマーでは、マイクロファイナンスの融資を利用している零細事業者が270万人もいる。しかも、その8割以上が女性だと言われている。
彼女らは数万円の事業資金を借り、自分の将来のため、あるいは家族のためにビジネスをする。
ミャンマー人女性にとって起業は、日本よりもはるかに身近な選択肢なのだ。


<参考文献>

⑴WHO(世界保健機関)2015年データ
⑵ミャンマー計画財務省金融規制局(FRD) 2017年11月集計

 

取材協力:Socio Lite Foundation


話し手
ビジネス:八百屋・木工職人
世帯人数:11人 [父・母・兄弟(6人)・夫・息子]

 

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