ミャンマービジネスパーソン

 女手一つで息子2人を育て上げる。2005年、夫と死別したソーソーメイさん(44)が直面した現実は、厳しいものだった。「あの頃は将来が不安でしょうがなかった。眠れない夜が続いたわ」。だが13年が経った今、20歳と13歳になる息子たちはそれぞれ職場と学校で元気に暮らす。そして彼女は、駄菓子屋を営むかたわら、多様な資産運用を手掛けるようになっていた。

一見、普通の駄菓子屋さんのおばちゃんだが…

 ソーソーメイさんの駄菓子屋は、ミャンマーの最大都市ヤンゴンの郊外、シュエピター郡区にある。一見、ヤンゴンの街中でよく見る小売店だ。だが、駄菓子屋の収入は、彼女のビジネスのほんの一面に過ぎない。

 夫を肺ガンで亡くした後、2年間親戚に頼って暮らしながら、「自分が働けなくなった時が大変、子どもたちはどうするのだろう」と考え詰めた。その時から始めた貯蓄と投資。働いて得た収入を無駄に使わず、将来に備えて運用することにした。

ミャンマー女性
ソーソーメイさんは自分の駄菓子屋の前で来歴を語ってくれた。

 まずは、彼女の兄が営む繊維関係の工房に150万チャット(約12万円)を投資。出資する代わりに売り上げから配当を受け取っている。この事業は成功し、毎月15万チャット(約12,000円)が懐に入ってくる。さらには、自身も活用しているマイクロファイナンス機関が手掛ける貯金サービスを使って、毎週7万チャット(約5,600円)を貯蓄している。加えて、「3年待てば、まとまったお金が貯まるから、車を買ってレンタルで賃料を稼ごうと思っているの」と、収入の元手を増やす計画も教えてくれた。

 ミャンマーの庶民の家庭では、「その日の食費が手に入ればそれでいい」として、家計について深く把握していない人も少なくない。そんな中でも、ソーソーメイさんに家計の状況を尋ねると、すらすらと様々な金額を上げてみせた。よほど資産の運用に注力しているのだろう。

より良い生活を目指し、商売も堅実に

 彼女のきっちりとした性格は、資産の運用のみならず、駄菓子屋の経営にも見て取れた。ミャンマーの小中学生は、登校前に親からお小遣いをもらい、授業の合間に軽食を買って食べる。そこに目を付けたソーソーメイさんは、子どもたちに人気がある駄菓子に目をつけ、小中学校の中に店を構えたのだ。店頭にはカラフルなパッケージに包まれた「ポテトチップス」や飴がずらりと並ぶ。

お菓子を持つ女性店主
人気商品を手にするソーソーメイさん。

 また、子ども相手に食品を売る以上、安全な商品を並べなければならない。営業許可証は店の目立つところにしっかりと掲げる。たとえ売れる駄菓子であっても、政府が危険な添加物を含むと注意喚起したものは取り扱わない。3度、対象の駄菓子の販売が発覚すると、学校側は立ち退きを命じるそうだが、もっか商売は無難にこなしているようだ。

学内営業許可証
いつも店内に掲げている営業許可証(画像を一部修正)。

 一方、ビジネスチャンスは積極的に模索を続けている。過去10年間は道端でヨーグルトを売っており、今の駄菓子屋を始めたのは、つい3か月前。だが早速、「駄菓子屋さんの次はサンダルよ。賞味期限のある駄菓子と違って、在庫が管理しやすいからね」と、誰もがサンダルを履くミャンマーならではの商売に目をつけている。

駄菓子屋の様子
昼休みになり、子どもたちが駄菓子を買いに来た。

 これほど頑張れる理由は、やはり「息子たちのため」だ。20歳の長男も、製本工場で働くかたわら、英語と中国語の教室へ通っている。ミャンマーでは、しばしば子どもも家計の一部を支えるという。だが、ソーソーメイさんは、「教育は大切よ」と言って、長男の収入の全額を授業料に充てさせている。そんな頼れるお母さんは、インタビューが終わると、休む間もなく子どもたちに駄菓子を売りさばき始めた。

ミャンマー女性

話し手:ソーソーメイ(44)
ビジネス:駄菓子屋
世帯人数:3人(母、子ども2人)
世帯月収:41万4,000チャット(約33,000円)
(内訳)
駄菓子屋:26万4,000チャット(約21,000円)
投資からの配当:15万チャット(約12,000円)

 

取材協力:Socio Lite Foundation

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